無料体験講座

トレンド系指標

トレンド系指標

トレンド系指標

1. 気候変動と並び注目される「生物多様性」

生物多様性の喪失が、非常に大きな経済上のリスクとして認識されるようになってきている。世界経済フォーラムは2020年に発表した「Nature Risk Rising1」で、世界の総GDPの半分以上にあたる約44兆ドルの経済価値創出が自然資本に依存しており、自然の破壊によるリスクにさらされていると報告している。また、同機関が発行する「グローバルリスク報告書 2 」の2022年版では、「深刻度から見たグローバルリスク」の3位に「生物多様性の喪失」が挙げられている。

2. TNFDの発足とベータ版フレームワークの公表

気候変動と同様に生物多様性への注目が高まる中、「自然関連財務情報開示タスクフォース」(TNFD: Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)が、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD:Taskforce on Climate-related Financial Disclosures)に続く枠組みとして、2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で着想された。これは、民間企業や金融機関が、自然資本および生物多様性に関するリスクや機会を適切に評価し、開示するための枠組みを構築する国際的なイニシアチブである。TNFDは、資金の流れをネイチャーポジティブに移行させるという観点で、自然関連リスクに関する情報開示フレームワークを構築することを目指している。

図 TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク エグゼクティブサマリー

(出所)TNFD(2022), “TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク エグゼクティブサマリー”, p.3

3. TNFD のベータ版フレームワークの概要

(1) 自然を理解するための基本的概念と定義

(2) 開示に関するTNFDの提言

(3) 自然関連リスクと機会の評価アプローチ–LEAPの導入

(1) 自然を理解するための基本的概念と定義

TNFDのベータ版フレームワークで使用されている「自然」や、「自然資本への依存・影響」、「自然関連リスク・機会」の概念と定義を説明し、それぞれがどのように関係し合うかについて整理している。具体的には、金融の世界において財務資産から利益が生み出されるのと同様に、生態系や生物多様性も社会における大事な「資産(ecosystem assets)」であり、それらが豊かな状態であることでもらたらされる「生態系サービス(ecosystem services)」は、健全な経済活動になくてはならないものであると整理されている。生態系サービスには、原材料や食料を供給する「供給サービス」、水質浄化機能や災害を緩和する機能や花粉媒介などの生物によるコントロールを含む「調整サービス」、また観光やレクリエーションと結びついた「文化的サービス」があり、これらが人為的活動によってどう変化し、影響を与え合うかが検討の対象となる。

図 自然を理解するための基本的概念

(出所)TNFD(2022),”The TNFD Nature-related Risk & Opportunity Management and Disclosure Framework Beta v0.1 Release”, p.25

図 TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク エグゼクティブサマリー

(出所)TNFD(2022),”The TNFD Nature-related Risk & Opportunity Management and Disclosure Framework Beta v0.1 Release”, p.40-41

(2) 情報開示に関するTNFDの提言

  • 自然に関する依存関係や自然の影響についての評価
  • ロケーションの検討
  • 自然関連リスクと機会の評価および管理に関する能力の検討
  • 開示のスコープと今後の開示で扱われる内容についての記述

図 アプローチ

(出所)TNFD(2022),” TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク エグゼクティブサマリー”, p.6

グローバル基準との整合性 サステナビリティに関する基準が乱立し、混乱が生じていることから、TCFDの情報開示フレームワークと一貫性を持たせる。
今後のフレームワークの開発段階で、新しい世界的な基準とも整合させていく。
統合的な情報開示の実現 財務報告書と統合されたサステナビリティ開示を促進する。
TCFDまたは関連するフレームワークが使用されることを想定し、温室効果ガス排出に関する特定の文言は含めない。
“ロケーション”の重要性 依存と影響は特定のロケーションで発生するため、重要な自然関連リスクと機会を確実に特定するためには、バリューチェーン全体(直接・上流・下流を含む)でロケーションに基づいた分析を行う必要がある。
リスクと機会の両面の考慮 リスクだけではなく、短期・中期・長期の自然関連の機会と、それに関連する将来パフォーマンスを評価する指標と目標を開示することを推奨する。
マテリアリティの考え方 バリューチェーン全体(直接・上流・下流を含む)で、依存と影響に関連する重要なリスクと機会を開示することを求めている。
短期的には重要でなくとも、中長期的には企業価値にとって重要なリスク・機会となる可能性があるため、複数の時間軸で検討を行う必要がある。
時間軸の考え方とシナリオの活用 気候変動を含む、自然に関する長期的なトレンドと重大な不確実性を適切に考慮できるように、さまざまな長期的シナリオを考慮することを推奨している。
※短期:2年未満、中期:2~5年、長期:5年以上
※今後、シナリオ分析に関する追加的なガイダンスを発行する予定
開示範囲 開示範囲を明確にし、透明性を持たせる必要がある。
初期は開示の優先順位をつけ、最も重要なリスク・機会のある特定の事業活動に焦点を当て、段階的に範囲を拡大していく形で問題ない。
今後の開示計画の概要をあわせて説明する必要がある。(TCFDと同様、5年以内にサプライチェーン全体の重要な影響・依存を考慮する必要がある。)

(出所)TNFD(2022),”The TNFD Nature-related Risk & Opportunity Management and Disclosure Framework Beta v0.1 Release”, p.42-45より当社作成

(3) 自然関連リスクと機会の評価アプローチ –LEAPの導入

ベータ版フレームワークの中では、自然関連リスクと機会の総合評価プロセスである「LEAP(Locate, Evaluate, Assess, Prepare:発見、診断、評価、準備)アプローチ」が提案されている。これを活用することで、情報開示に関するTNFDの提言に沿った戦略、ガバナンス、資本配分、リスク管理の意思決定が可能になるとされている。

図 自然関連リスクと機会の評価アプローチ

(出所)TNFD(2022), “TNFD自然関連リスクと機会管理・情報開示フレームワーク エグゼクティブサマリー”, p.7

4. TNFDがロケーションの重要性を強調する背景

ここでは、ENCOREというツールを用いて、自然資本に対する依存と影響を評価する。ENCOREは、国連環境計画世界自然保全モニタリングセンター(UNEP WCSC)や金融機関が共同で開発し、TNFDのDiscussion paper トレンド系指標 5 の中でも、生産プロセスと生態系サービスの関連を評価するために活用できるツールのひとつとして紹介されている。

表 自然資本に対する依存と影響

(出所)ENCORE, Agricultural トレンド系指標 Products / Large-scale irrigated arable cropsより当社作成

表 TNFDが提案する自然資本

(出所)ENCORE, Explore hotspots of トレンド系指標 natural capital depletion using the mapより当社作成

5. 終わりに

  • TCFDと同様に、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱での開示が求められる。
  • 自然資本への依存と影響の両方を考慮する必要がある。
  • リスクと機会の両方を意識する必要がある。
  • バリューチェーン全体で、ロケーションに基づいた評価・分析を行う必要がある。
  • 自然関連リスクと機会の評価アプローチ(LEAP)の導入が提案されている。

1 World Economic Forum, Nature Risk Rising: Why the Crisis Engulfing Nature Matters for Business and トレンド系指標 the Economy (2020)

2 World Economic Forum, トレンド系指標 The Global Risks Report 2022 (トレンド系指標 2022)

3 Kunming Declaration; Declaration from the High-Level Segment of the UN Biodiversity Conference 2020 (2020)

4 HM Treasury, The Economics of Biodiversity: The Dasgupta Review (2021)

5 TNFD, Discussion paper: A Landscape トレンド系指標 Assessment of Nature-related Data and Analytics Availability (2022)

関連記事

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次
閉じる